何処へ行くの、あの日

ブランド: MOON STONE
絵麻エンドでコンプ。一葉の言葉を借りるなら正に、吐き気がするほど、ロマンチックだね。妹ものの極北に置きたいお話でした。とか言っても別に、純然たる妹ものってわけじゃありません。
ジャンル名としては「Serious Lyrical Fantasy ADV」だそうです。シリアスってのはまあ同意、リリカルは――つーかリリカルって何? やたらハイテクチックなステッキを使う小学生魔法少女? と疑問に思って辞書を引く抒情的・抒情詩的であるさまとのこと。確かに叙情的な文体と言えないこともないけど恐らくは作品全体の雰囲気を指しているんでしょうから概ねそれっぽいかなという感じがするのでこれも良いでしょう (雰囲気で言葉を選ぶ日本人的妥協) 。最後のファンタジーについては、より正確にいえば SF 風なものと思えば良いかと。並行世界とかメタとかその辺の世界観を含めて言い表すのであれば。
お話は全て絵麻、妹へと収束するタイプを取っています。このタイプの一番の欠点は、ただ一人へと収束しすぎるために特定キャラ以外が半ばサブキャラとして外野へと押しやられてしまうこと。なので絵麻ルートに入っても全く忘れられず、むしろその存在に意味を持たす流れはとても良いものでした。多少、個別エンディングに差異はあれど結果的には全て等しいということもわかりましたし。
ちなみに本物のサブキャラたちはチョイ役で済ますべきでないキャラまで使い捨て感覚です。出番が限られる本当の端役だけならまだしも、クラスメートとか引っかき回し役まで道具的な立ち回りなのは流石に切り捨て過ぎでは。三木村さんはバランス良く絡んでくれていたのに。
お話の内容は……えぇと、いったいどう要約すべきなのか非常に迷います。前菜にあたる個別シナリオに限れば、後ろ向きな主人公が同じく後ろ向きなヒロインに何とか前を向かせるという実に適当な言葉で粗筋を語れるのですが。前菜は前菜、それでも主菜に繋がっていることを考えれば強ち外れってわけでもないとしても、もっとこう何か良い言葉はないものかな。
殺人の記憶、事件、過去、妹、とお話の構成要素は多いので一周目は結構混乱しました。何だかんだで大部分は後回しにされちゃいますので、最初は記憶に留める程度で流すのが吉です。記憶に留めてはいても、すぐに引き出せなきゃあまり意味はないんですけども。
というのも演出的なものを含めて伏線や暗喩がほぼ全体に、それも一周目から出ていて既読スキップを使う二周目以降でそういえばそんなシーンがと思ったことが幾度かありました。まるで如何に上手く記憶の引き出しを扱えるか試されているかのようです。既読スキップされることを前提とした構成というのも難しいかもしれませんが、フラグ管理とかで一工夫欲しいものです。
しかし本当に難しくなるのは最後の最後。表面的にはわかっても、深く見ようとするとそのシナリオ構造が複雑さに邪魔されます。一度整理して、やり直したり振り返れば自ずと見えてはくるので必要以上の考察や推理までは要求されません。それでも、今までに食べたパンの数は無理としても昨日食べた夕飯ぐらいはすぐに出てこないと駄目かと。常にランダムアクセスが可能な紙媒体に比べると、ゲームはこういう時にちと不便さを感じますね。
CG とかは見た通り。塗りがやや古臭いアニメ塗りなのは残念です。あと千尋は胸の大きさが着衣の立ち絵脱衣のイベント CG で違い過ぎです。背景は街ぐるみで欧州志向になるか、日本の中の異国以外にはありえねーとしか思えない日本離れした風景になっている事以外はツッコミなし。
音声はフルボイス、女性陣は無難に有名どころです。正直、聞き飽きてきた感があった北都南さんの声が自然に馴染んだのがちょい驚きでした。あまり聞き慣れなかった雰囲気を感じたからかもしれません。
BGM 製作は ave;new 。特に派手さとか印象的な一曲とかはないものの無難に一通り揃っていると思います。タイトル画面や汎用エンドの曲は好み。初回特典のサントラには BGM 全曲収録、ただしボーカル曲はショート仕様という清く正しい「Original Sound Track」となってます。

よかったところ
呉氏が書く変化球妹ものであったこと
わるかったところ
シナリオ構造の複雑さは面白さの一つでもあるので否定しません、しかしやや演出過多のようにも感じます

呉氏のシナリオ、たとえば水夏の第一章、第三章が好きな人なら十分楽しめるのではないかと。私も水夏の三章は特に好きだったのでこういうのはもう好きで好きで。朧気に先が読めそうになることはあっても、いつ予想を裏切られるか分からない期待と不安を常に感じていられるのは本当に楽しいものです。

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