はるのあしおと

ブランド: minori
智夏エンドでコンプ。別に隠しキャラってわけでもないのに、これまでの 3 人とは随分と趣が異なりますね。暗く、というか重くならないし。
本作は一言で言うと、駄目な主人公と駄目なヒロインの駄目な人なりの成長物語です。成長物語だなんてありがちな言葉ですが、これほどテーマを的確且つ明確に示す言葉は他にありません。それだけテーマに沿った、実にストレートなお話しです。
かといって前半で問題点を明かして後半で切欠になりそうなイベント起こして前向きになって円満解決な王道パターンでもありません。心情描写主体で成長を描くため、全体を通して特に盛り上がりも無くどちらかといえば淡々としたものです。選択肢は片手でお釣りが来る数だけ、しかもシナリオ分岐後は一本道で完全な読み物というスタイルにも関わらずテンポの良さを感じられたのは、捨てるべきシーンをきちっと見切った潔さではないかと。大きな緩急が無い分、ゆっくりでも着実に進んでいくお話しを追っていく感触はありました。
使い古された成長物語というテーマでも何となく心残るものを感じるのはきっと、子供の駄目さと大人としての駄目さの同居を感じてしまったからでしょうかね。主人公は冒頭から駄目駄目です。それに対するヒロインたちも同様に駄目な人たちです。ですがその駄目さはそれぞれ異なるもののはずです。言ってみれば昔の駄目さと今の駄目さ、その二つを感じたのかもしれません。にしても主人公とヒロインの年齢差というものをこういう形で使われるとは思いませんでした。
CG やシステム、音声、BGM といった脇を固める部分は特にどころか殆どツッコミどころ無し。セーブデータにバックログ情報をちゃんと持っているシステムって便利だけど少数派なのによく実装してきたもんです。
演出は基本型が確立して久しい ADV の一つの到達点とでも言いましょうか。age の AGES のような演出を動的というなら、こちらは静的な演出です。台詞との不一致による不自然さを極力抑えた口パク、カットや背景 CG 内での描写といった派手ではないけど決して無駄でもない、良い意味で地味な――もしくは落ち着いた演出です。読み物というスタイルなら、このぐらいが丁度良いのかもしれません。

よかったところ
駄目な人でも駄目な人なりに成長するところ
わるかったところ
和とゆづきを除けば、キャラ間の絡みが割と薄めにみえるところ

冬来たりなば春遠からじ。耳を済ます勇気と意志さえあれば、「はるのあしおと」はきっと聞こえてきます。なんて思ってしまえる意外な良作でした。
オマケで白波瀬シナリオがあるに違いないとか思って探したのは秘密。

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