Fate/stay night

ブランド: TYPE-MOON

体は剣で出来ている
血潮は鉄で 心は硝子
幾たびの戦場を越えて不敗
ただの一度も敗走はなく
ただの一度も理解されない
彼の者は常に独り 剣の丘で勝利に酔う
故に、生涯に意味はなく
その体はきっと剣で出来ていた

桜トゥルーエンドと残りエンド、未読選択肢、タイガー道場まで制覇してフルコンプ。分岐やグッドエンドを無視して桜エンド到達まで 53 時間、フルコンプまで 61 時間。確か YU-NO でコンプまで約 30 時間程度でしたっけ? 噂に違わぬ、正気を疑う長さです。
で、それはいいからイリヤエンドって何処? と問い詰めさせてください。60 時間も待たされてエンドもルートも無いと知ったこの絶望をどうしろと。そりゃキャラ紹介の説明文を注意深く読んでいれば容易に気付きますけどね。まさかこんなにストイックな作風だとは思いませんでした。
見てくれは典型的なビジュアルノベルにも関わらず、多数の即死 & 好感度選択肢が随所に鏤められてます。そういえば月姫もこんなんでしたっけ。選択肢の少ない作品続きだったのでこの無駄なまでの多さはなかなかに刺激的でした。デッドエンド直行選択肢のくせに、ちゃんと至るシナリオを書いてるのですぐ気付かないあたりも悪質で良いです。
システムは吉里吉里。凡そ考えられる必要機能は全て実装済みです。月姫譲りのシーン単位スキップも健在。選択肢の多い作品で必須なセーブデータ管理機能もきちんと整備されていて驚きました。セーブデータの「削除」に対応したシステムは見たことがありますが、セーブデータの保存ポイント (マス目) の D&D による入れ替えが可能なシステムは初めてです。
シナリオは一周あたり約 20 時間という素敵すぎる分量です。しかも重なるのは序盤のみ。セイバーシナリオは在るべきところに収まった、お話しも背景も判りやすくシンプル。多少、いやかなり色気がない事を除けばえろげチックなお話しといえます。
が、凛シナリオは別物。いや同じ話をやられても仕方ないので別物なのは当たり前としても、えろげの基本フォーマットから逸脱しすぎてます。主役は明らかに主人公、って字面をみれば物凄く当たり前ですねこれ。ヒロインを差し置いて、主人公のお話をメインに据えるというのは極めて珍しい。確かにこれが無ければ主人公はただの変人なので必須といえばそうなのですが。
桜シナリオは負の一面を一身に背負ったかのような扱いの酷さが全て。腹黒にもなりきれない不幸な地味キャラという位置づけが人気の低さに直結してるのか。たまに見せる腹黒さとかラストとか好きなんですけどね。不幸キャラに堕としておきながら躊躇があったのか、黒く輝くところまで至れなかったのが敗因じゃないかと。
悪役っぽいキャラが揃いも揃って悪役面しているのは一種のギャグというか様式美なのでしょう、きっと。
テキストにはやはり独特なクセが漂います。あと目に付くのが独特なルビ振り。「我」と書いて「オレ」と読ませる、つまりは「 (オレ) 」なんて視覚的効果を狙った表記とか、そのオタ受けしそうなセンスによる技名とか、英文の意訳とか随所で用いられています。その他真面目に読んでも意味のわからない文章とかもあるのでノイズを軽く流せる耐性は必要でしょう。
一番の懸念点だった、ぐだぐだとした用語説明だの世界観説明だのが少なかったのは予想外でした。適宜あるといえばありますが、鼻につくほどではなかったということで。
本作で一番目を惹くのはやはり戦闘シーンの多用なエフェクトです。安易なアニメーションに頼らず、一枚絵と特殊効果を組み合わせてここまで魅せた作品は寡聞にして知りません。決して飽きないように、決して既視感を抱かないように演出過剰なまでに派手に、煌びやかに、そして鮮やかに。下手すりゃアニメーションにするよりも手間暇かかるんじゃないかと思うぐらいの派手さを終始維持できたのは見事としか言いようがありません。
しかし一方で、その視覚的な派手さ故に燃えないのです。テキストで描写されるべきものまで含めて、エフェクトが呑み込んでしまうのでどうしても気が削がれてしまう。何事も程々が良いって事でしょうか。
演出といえば、用意された SE は 400 以上あるようです。えろげの SE なんて精々 30 、多くても 100 程度だろうに。勿論、剣戟の音だけでも高低や残響の違いで分けるといった徹底ぶり。これだけの数を発注する方も作る方も大したものです。
CG はやっぱり彩色の匙加減一つでこうも雰囲気が変わるものなのかと。背景の美しさも文句なし。立ち絵も異様なまでに豊富です。一回限りしか使わないようなレアな表情含めて一体幾つ用意したのだか。

よかったところ
アーチャー格好良すぎ、桜地味すぎ、キャスターは健気すぎ
わるかったところ
イリヤ可愛いよイリヤ、一般作品かと見紛うような色気の無さ

確かに世間、いやオタ界隈で色々と話題になるだけあって面白かったです。60 時間超なんて正気を疑う分量でも楽しめたのが何よりの証左。かといって月姫の時のような衝動というか、あれこれ追いかけ回したいというようなファン心理までは行かないというのが正直なとこです。面白いかといえば面白いしキャラには惹かれた、だけど燃えも萌えもいまいち不完全。俗世にまみれた私には、在って然るべきえろげ的展開のほぼ皆無な少年漫画風大作はちときつかったようです。
というか桜シナリオがもっと真っ当なエロ補完ルートならここまで萎えなかったと思うのですが。バッドエンドでは悉く殺され、えろげお約束な陵辱エンドだのは皆無。別に無駄な H シーン入れろってわけじゃなく、ちょっとしたお遊びが欲しいと思うのです。ヒントコーナーのタイガー道場も良いですが、ギャグ方面じゃなくて色気方面なお遊びがあまりにも少ない。これではさすがに喉が渇いてしまいます。
にしてもこれって伝奇ものなのかなあ。伝奇というとどうしても和風なイメージがあるので、こう西洋的だと伝奇というよりファンタジーと呼んだ方がしっくりくるような。
「Fate/hollow ataraxia」は発掘が面倒なので後回し。

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