黄昏のシンセミア

初回特典冊子も一通り読んで、気になっていた設定の補完もできたので纏めと。本編の描写だけじゃまずわからないような事を設定解説で理解するっていうのは、どうも気に入らないパターンではあるのですけど。

夏、田舎、伝説、そんな正統派過ぎる要素をベースとした伝奇ものですが、化け物はいてもホラーな要素は控えめで、むしろ伝説に纏わる部分が主となります。なので戦闘的な描写も控えめというか避けてるようです。

メインキャラは妹、従姉妹、幼なじみ、謎のお姉さんと無難な布陣。各ルートで伏線が張られたり回収したり、ルート内だけではなく別ルートでの伏線になっていたりとしてることを乗り越えてエンドを目指すというよくある構成です。

気になるとすればこの各ルートでの真相の見え具合といったところでしょうか。色々と情報は出てくるものの、肝心要の部分には殆ど近づけない状態が続いてしまうためエンド後の満足感が薄くなります。そして何より、欠片の一片さえもなかなか見せてくれないので牽引力に乏しく、先を読みたくなる気力が削がれてしまいます。

ネタを振りまきつつ、徐々に収束させていくのがこのタイプの様式美であり理想だとは思うのですが、各キャラルートの時点で見せるつもりはないのか意図的に隠蔽して勿体ぶって出し惜しみしているように感じます。

細かい設定や背景については最後の最後でどばっとやってくれるので、急に面白くはなるのですが、最後まで引っ張る部分とチラ見せしておく部分の取捨選択はもう少しして欲しかったところです。設定に関して、本編で書ききれなかった部分や説明不足になってしまったところがあるだけに。

ひぐらしでいうところの TIPS のように、別視点や別時間の出来事、if なオマケといったショートストーリーをフラグメントという形で徐々に見せていく形にはなっていますが、ヒント的な使い方ではなくシナリオ補完的な使い方のようです。重要な部分はこういうのではなく、ちゃんと本編で十全に書いて欲しいと思うのでそこは良いのですけども……その本編でも、ちょっと足りないというのはどうしたものか。

システム面では、他にフローチャート機能が実装されています。過去、幾つかの作品で取り入れられてきたものの、その多くは見た目だけのものでプレーの補助になるような「使える」レベルのものではないという機能ですが、本作のフローチャートはそんな偏見と印象を見事覆すものでした。任意のシーンへのジャンプ機能は勿論、シーンをポイントした時のプレビュー、拡大縮小、時間軸上の位置も視認可能と珍しいぐらいに「使える」フローチャートとなっています。

ここまで高機能だとそれなりに分岐が複雑でないと活用のしようがなくなってしまうようにも思いますが、典型的な樹形図分岐でも分岐位置や全体構造の把握、未到達のルート確認には非常に役立ちました。まさかこんなところで役立つレベルのシナリオフローチャートが見られるとは思わなかったのでちょっと驚き。

一応、サブキャラについてもルートはあります。ただし扱いはかなり軽く、村の事とかどうでもいいやって投げ出すルートでもあります。無理にシナリオに絡めろとはいいませんが、もうちょっと想いを育むとかいちゃいちゃするとか、別な方向性を持たせた方が面白いのでは、とは思います。安易なファンディスク封じを自らやっているという点では立派だと思いますけど。

属性的な話だと、やはり本作は伝奇ものというカテゴリになるのだと思います。ちょっと現代科学的な面で理屈付けしようとしてたりもするちぐはぐ感は微妙ぽくはありますが。

また田舎といってもバスですぐ、それなりに開けた駅に出るという舞台なので閉鎖的とか陰湿的な田舎といった記号ではなく、ちょっと寂れた片田舎、人と人の間がちょっと重いぐらいの軽い田舎といった雰囲気です。

キャラ的な部分だと、これはやっぱり、さくやがメインヒロインというかもう、さくやの為にあるようなお話でしたというか。不思議とそんな特別扱いは感じなかったのに。ただ、この兄妹の微妙な距離感、漂う空気はかなり好きな部類です。付かず離れずというのが一番しっくり来るこの距離は上手い。

  • よかったところ
    • 正統派気味伝奇ものとして楽しめましたし、フローチャートは便利だし、妹との距離は上手いしで意外な良作でした
  • わるかったところ
    • 伏線をばらまくだけじゃなく、どのタイミングで拾うかをもうちょっと詰めて欲しいとこです。設定解説が無いとわかりにくいというのは非常に惜しい

直感的に面白そうだと思っていた作品が予想以上に面白いと嬉しいよね、といった感じでちょっと甘めかなと思いつつも、ネタの引っ張りすぎ感を除けば楽しめたのは事実です。

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